マウスピースの違い | |
画像によるマウスピースの違いです。左から、Masspacher社(寄贈品A・Saxに付いていたもの)・ラッシャー社・セルマー社です。 Masspacher社とラッシャー社はラージチェンバーですが、金属の方がぴしっとした感じがします。その昔、クラシックのサックス奏者は金属製を使っていたといいます。二つを吹き比べるとラバー製はふわっとした感じ、金属製はぴしっとした感じで、金属製の方がコントロールしやすく表現や音色の違いを付けやすく思えます。 いくつかのアルト用マウスピースを入手してわかったことがあります。アドルフ社や19世紀の楽器はラージチェンバーのマウスピースで吹くことを前提に作られています。19世紀~1920年代、折り重なる時期を経て1930年代以降とでマウスピースの基本デザインが大きくかわりました。チェンバー部分の容積が小さくなったり、バッフルの高さの高低による音色やコントロール感の違いに気付いたりしていきました。その結果、音は大きくなりより明るくよりはっきりと聞こえるようになりました。アドルフ社の楽器やこちらで用意したマウスピースを試奏された方の多くが、この楽器の持つ音色感と抵抗感で現代の楽器が吹きたいと思われたようです。しかしそれは相反するデザインの違いから難しいことがわかってきました。一番の問題は、基本となるピッチです。A=430くらいの設定が多いようなのです。このピッチからくる落ち着いた暗目の音色感を気に入る方が多かったようなのです。実際新しい方のラッシャーのマウスピースだとギリギリA=440で演奏ができそうなのですが、どうしても音色が明るめになってしまいます。またバッファーのえぐりこみが深めの上、その部分の厚みが少し厚い方が良い結果が出ることもわかってきました。これも基本となるピッチが低めになることもわかってきました。つまりこの音色感を持って現在のピッチで吹けるマウスピースは作れないのです。しかし、個人で一時的に練習で使うなら問題ありません。その中で体の中や吹き方のチェックに使ってもらえればと思います。あの独特の音色には麻薬のように引き付ける魅力があります。そしてしっかりとそのイメージを持って吹けば、現代の楽器とマウスピースでも意外と簡単にあの音色を再現することができます。その方が、音色を曲のイメージに合わせて変えられるようになるでしょうから、発展性があるように思えます。奏法のチェックように19世紀の道具を使い、実際の演奏には現代の道具を使う。今いえる最良の方法です。大元となる音出しの方法についてと、時代による違いや現代の奏法などは、アドルフ社の楽器と当時のマウスピースを使ってレッスンすることも可能です。特に奏法に悩みを持たれている方には解決する大きなチャンスとなるかもしれません。これはアマチュアや初心者に限ったことではなく、専門に勉強されている方やプレーヤーとして活動されている方であっても同じです。詳しくはお問い合わせ下さい。 |